まずはスペック表を見てみましょう。 ZenPad S 8.0はZenPadシリーズの最上位モデルに位置付けされている製品です。性能怪獣(パフォーマンスモンスター)の愛称で知られる「ZenFone 2」同様、64bit対応のIntel Atomプロセッサ(クアッドコア)に4GBRAMを搭載しており、筆者はタブレット版性能怪獣と呼んでいます。 しかし、ここ1年ぐらいのハイエンドモデルはオクタコア(8コア)CPUを搭載していることが多く、ぱっと見では「性能怪獣と呼べないのでは?」と思ってしまいます。 そこでベンチマークテストを行ってみました。
ベンチマークテスト結果で見えた正体
Android端末のベンチマークテストでお馴染みの「AnTuTu Benchmark」を使用して、ZenPad S 8.0とソニーモバイル製の「Xperia Z4 Tablet」をベンチマークテストしてみました。 ベンチマークテスト結果では、Qualcomm製のオクタコアCPUを搭載するXperia Z4 Tabletが圧勝でした。 しかし、価格を見てみるとZenPad S 8.0は4万円弱でXperia Z4 Tablet Wi-Fi版が7万6千円弱とその差約2倍です。 また、上位を見てみると同じくオクタコアやヘキサコアCPUを採用した端末ばかりで価格も高価です。 つまり、ZenPad S 8.0は「性能怪獣」ではなく「費用性能怪獣(コストパフォーマンスモンスター)」だったのです。 「良いものがほしいけど、できれば費用は抑えたい」という人間の心理を上手くついた製品ではないでしょうか。
ZenPad S 8.0の魅力とは
コストパフォーマンスが優れているというのはあくまでもカタログスペックとベンチマークテストの結果から得られた数字上での話でしかありません。 重要なのは実際に使ってみて得られた体験ではないでしょうか。そこで筆者の体験をもとに、ZenPad S 8.0の魅力を簡単に解説します。
魅力1. 大容量RAMの安心感
ZenPad S 8.0の魅力はなんといっても4GBという大容量のRAMを搭載していることではないでしょうか。 スマートフォンも含めフルHD以上の解像度のディスプレイを搭載したいわゆるハイエンド端末では3GBのRAMを搭載していることが多いですが、それはディスプレイの高解像度化はもちろん、3Dゲームやあるいは2Kや4Kのような高解像度動画などのコンテンツが増えてきているというのが理由の1つです。 しかし、そのようなハイエンド端末もあれもこれもやっているとRAMの空きが少なくなって動作がモッサリになってしまいます。もちろん、使ってないアプリを終了させればいいのですが、毎回そのようなことをやっていると面倒です。 ところが、ZenPad S 8.0は更に1GB多い4GBなので、他のスマートフォン、タブレットよりもRAMの空き容量を気にせずにがっつり使うことができます。 実際に定番のゲームアプリや電子書籍、動画を楽しんだ後に、RAMの空き容量を確認してみました。さすがに1GB未満になっていると予想していたのですが、1.3GBもの空きがあり、良い意味で期待を裏切ってくれました。
魅力2. 電子書籍が読みやすいアスペクト比4:3のディスプレイ
よく筆者はタブレットの購入相談を受けますが、タブレット購入を検討する理由で最も多いのが「電子書籍を楽しみたい」です。 ZenPad S 8.0はコストパフォーマンスもよくその点はクリアできます。更に、ディスプレイはアスペクト比4:3となっており、このお陰で電子書籍が読みやすくなっています。
今後の課題について
いいところがある一方で今後の課題ももちろん存在します。期待の意味を込めて筆者なりに特にお願いしたい今後の課題を3点挙げてみました。
課題1. モバイルデータ通信への対応
これはZenPad S 8.0の購入者、購入を検討している方の皆さんが感じていることではないでしょうか。 ASUS Japanの製品ページにも「どこへでも連れ出したくなります。」と書いてあるだけに、持ち運びを想定した製品であることは言うまでもありません。 しかし、それにも関わらずモバイルデータ通信には対応しておらず、持ち出す際はモバイルルータもしくはスマートフォンのテザリング機能を利用する必要があります。 ZenPadシリーズの他のモデルとの兼ね合いもあるのでしょうが、最上位モデルに位置づけられているので、次期モデルではしっかり対応して欲しいです。
課題2. 純正アクセサリの充実
AppleのiPadまでとはいいませんが、Xperiaタブレットなどキャリアでも取り扱われている端末ではケース、カバーなどのサードパーティ製アクセサリが充実していますが、それ以外のタブレットはそれほど多くありません。 そのため、純正アクセサリのラインナップを充実させて欲しいところです。 ちなみに本国台湾ではZenPad 8.0用アクセサリとしてオレンジ色のバックパネルが販売されています。是非日本でも販売をして欲しいですね。
課題3. スタイラスペンを本体収納可能に
純正アクセサリとしてZenPad S 8.0/ZenPad 10専用のスタイラスペン「Z Stylus」が用意されています。このスタイラスペンは一般的なボールペンなどと同じ太さで書きやすいのですが、その一方でサイズがネックで持ち運びにくいというもどかしさがあります。 同じく純正のZenPad S 8.0専用ケース「Zen Clutch」にはZ Stylusを挿すホルダーがあるのですが、このケースを付けるとせっかくのZenPad S 8.0の薄さ、軽さが犠牲になっていまいます。どこまで許容するかが難しいところですが、筆者はネックに感じています。 前述の通り、ZenPad S 8.0は持ち運んで使用することを想定して作られたタブレットです。そのため、サムスンのGALAXY Noteシリーズのように本体に収納できるサイズのスタイラスペンにした方が利便性が上がると感じました。 この点も次期モデル開発の際、考慮して欲しいところです。 大容量RAMの恩恵で3Dゲームで遊んだり動画を視聴しても動作がもっさりになることはほぼありませんでした。また、電子書籍が読みやすいアスペクト比4:3のディスプレイのお陰でこれまで以上に電子書籍を読む時間が増えました。 一方で、Wi-Fiモデルのみとなっており、持ち運び時にはモバイルルータやスマートフォンのテザリングが必要というような次期モデルで改善して欲しい今後の課題も存在します。 しかし、全体を通してみると非常に「買い」なタブレットだと思いますので、まだ実機を触ったことない方はお近くの家電量販店やASUSフラグシップコーナーに足を運んでみてはいかがでしょうか。